趣味のゴルフ
ゴルファーにとって、最大の喜びとは何でしょうか―?
言うまでもなく、緑の芝の上で白球を打ちながらラウンドすることだ―と、誰もが考えるに違いありません。わたしも同様に、クラブを振ってコースを歩いているだけでも楽しい―ただし、プレー態度のよい人と一緒なら、です。
とは言うものの、ゴルフがスコアを競う遊びである以上は、単にラウンドできれば嬉しいというだけにとどまらず、やはりより少ない数でまわりたい―と思うのが、ゴルファーというものではないでしょうか?
ここで、問題が生じます。あらゆるスポーツにおいて、技術の向上は練習なしには望めません。ゴルフでも事情はまったく同じで、絶えざる練習を通じてしか飛躍はできないのです。にもかかわらず、たいていのアマチュア・ゴルファーには、練習するだけの時間がない。できても、せいぜい週末の一日か二日に限られます。もちろん、これは当然のことです。社会人にとっては、ゴルフが上手になるよりも、仕事に精出すほうが大事なのですから。その証拠に、いま、日本のトップ・アマチュアと言えば、学生か自家営業の人ばかりなのです。
身も蓋もない言い方で結論を出してしまえば、ごくふつうの社会人が四十歳からゴルフを始めて、どれほど練習してもスクラッチ・プレーヤーになる、つまりハンディキャップ0になれることは―ごく例外的な才能の人を除いて―まずないでしょう。片手で数えられるハンディまで上達するのも、難しいかも知れない。何しろ、十代でゴルフを始めて数十年もプレーしていても、いわゆるシングルになれない人も多いのですから。
ですが、ゴルフは易しいのだ―と、わたしは敢えて言います。ラウンドでやっと100を切るぐらいのゴルファーを、シングルにするのは無理にしても、平均して80台でまわれるようには、比較的容易にできる―と思っているのです。
もちろん、毎日、仕事が終わってから練習場に駆けつけろとも言いませんし、どこかのジムに通って基礎体力を鍛えろとも言うつもりはありません。週に一回、週末に練習場に通えば、それで十分。
なぜ、それで十分か?それは、90も切れずに切歯扼腕(せっしやくわん)している人は、90が切れないのはボールを打つ技術のせいではない―と、わたしは思っているからです。技術はいまのままでも、90は切れます。頭を切りかえるだけで、ハーフで3打から5打ぐらいは、スコアを縮めることは可能なのです。
嘘だろう―と言う人がいるかも知れません。が、本当です。ゴルフは、そう難しいものではありません―80そこそこでラウンドできるレベルまでは。
その方法論を、次回から説明してみましょう。乞う、ご期待―です。
第2回 『まずはグリップとスタンス』
誤解しないで欲しいのですが、ゴルフのスウィングは自己流であって、いっこうに構いません。スウィングの目的が、人目に美しく見せるものではなく、ボールを打つための運動である以上は、極端に言えば、ボールを正確に打てさえすれば、どんな格好でもいい。ただし、あくまでもボールを正確に打てれば―の話です。
ですが、自己流のスウィングでボールを自在に打てる人は、実際上、少ないでしょう。そのために、どういうスウィングをすればボールを思うように打てるのか、先人たちはいろいろ研究を重ねてきました。その結果―時代によってスウィングのあり方に多少の違いはあるものの―一応のスタンダードが確立されて、今日にまで至っています。
それによって、ティアップしたボールを打つ場合で言えば、ボールが左足の踵の線上にくるようにボールに正対するアドレスが、まずできる(ボールに正対するということは、飛球線に対して体が平行になることを意味します)。アイアン・ショットの場合ですとボールの位置はほぼ10センチほど右に移動させます。
なぜ、ティアップした場合と地面の上から打つ場合とで、ボールの位置を変えなくてはならないのか?(この理由をはっきり理解するかしないかで、特にアイアン・ショットの精度が格段に違ってきます)
ゴルフ・スウィングという円弧の最下点は、ティアップしたボールに対する場合、ボールの約七、八センチ手前にくるのが普通です。これに対し、地面の上にあるボールを打つ際には、円弧の最下点がボールの二、三センチ先にくるようにクラブを振らなくてはなりません(そうでなければ、クラブの機能を十分に生かしたスピンをボールにあたえられず、飛球にロフト通りの高さも得られないからです。)このあるべき円弧の最下点の位置の違いが、体に対するボールの置き場所を変える必要を生むと思ってください。
さて、スウィングに入る前にもうひとつ大事なのは、グリップです。これも自分が握りやすい方法が一番いいと言えば言えるのですが、この点に関しても、先人たちの知恵はやはり生きていて、クラブを両手で握った際にできる親指と人差し指がつくるVの字が、右肩を指すように握るのがもっともボールを力強く打て、かつ方向を制御しやすいのです。
ゴルフ・スウィングは、始動しはじめると、長くても三秒、普通は二秒もかかりません。ですから、いったんスウィングを始めたら、体の動きを細部にわたって矯正することなど、不可能でしょう。要するに、スウィングに関するチェックはすべて、始動する以前にしなければならない―のですが、わたしの考えるかぎり、スウィングにおいて大事なのは、グリップとアドレスがまず第一。正しくグリップして、正しく立つ。ゴルフのすべては、ここから始まるので、自分のグリップとアドレスを検分してみてください。
第3回 『アドレスで注意すべき点』
さて、仮想の飛球ラインに対して平行に体をセットし、ボールの位置も決めてスタンスをとりました。これがアドレスですが、この際、いくつか注意すべき点があります。
このアドレスを飛球ラインの後方から見ると、体が「く」の字をちょっと右に傾けた格好になりますが、多くのゴルファーがこの「く」の字の頂点から、両目をボールに正対させて見ているのがふつうでしょう。そうすると当然、あごが引けます。
あなたがFBIから倒れたときに何が起こる
しかし、名手も含めた多くのゴルファーのスウィングを見てきて、アドレスではあごを引いてはいけない―と私は思う。なぜなら、あごを引いたアドレスから、バック・スウィングに入ると、左の上腕部があごに当たって(右利きの人の場合です)、左肩が十分に回らないことが往々にしてあるからです。自分では気づかないまま、ダウン・スウィングで右肩が突っ込んで引っかけボールになったり、大きなスライスを打ったりするのは、この左肩の回りの浅さに原因していることが、じつに多い。
だったら、どうしたらいいのか。アドレスしたとき、後頭部の毛をちょっと後ろに引っ張られたように顔をあげてみる。そうすると、あごがのどから離れ、ボールを少し見下ろす形になるでしょう。これが、アドレスにおけるチェック・ポイントの第一点。試みに、この形をしてバック・スウィングをしてみてください。左肩がすっとあごと首の間に入っていくのが体感できるはずです。
左肩が深く回せれば、ダウン・スウィングで右肩が突っ込んでくることも防げ、打ち急ぐことも起きません。ゆっくりとクラブが振れ、その分、クラブ・ヘッドも走ります。
(ついでながら、ゴルフのスウィングでもっとも大事なことは、クラブ・ヘッドを走らせる点ですが、不思議なことに、ヘッドは力いっぱい振っても走らず、ゆったり振ったほうがヘッド・スピードは上がります。こういう事実は、ゴルファーだったら経験的によく知っているのですが、いざスウィングする段になると、早く振るには力を入れなくてはならない―と、俗流物理学にとらわれてしまうもの。変な話ではありませんか。)
さて、アドレスで注意すべき第二点。両ひざにゆとりを持たせ、さらにバック・スウィングからフィニッシュまで、そのゆとりを絶対に保つこと。これです。
ひざのゆとりは、なぜ大事なのか?このゆとりが崩れると、スウィング中に頭が上下動してしまうからです。この上下動は、頭が左右へ動くよりも、ボールを正確にヒットすることを妨げます。ダフリ・トップのほとんどは、この頭の上下動によって惹き起こされると考えて、まず間違いない。むろんこれは、ウッド・アイアンを問わず、あらゆるショットのアドレスに要求されることです。
最後に。アドレスではひざを内側に絞る人も多く見られますが、私の経験では、むしろちょっとガニ股気味にしたほうが、ずっとスウィングは安定するように思えます。
第4回 『アドレスで注意すべき点 2』
アドレスでの注意点は、まだあります。それは、両手のひじの使い方です。
どんなゴルファーでも、アドレスでは、両手はほぼ真っ直ぐ下に垂らしているでしょう。したがって、両手とクラブがつくる角度は、おおよそ「く」の字の上半分を縦にした形になっているはずです。これが、アドレスでの正しい手の位置だと言っていい。
ところが、いったんスウィングに入って、バック・スウィングのトップからクラブを振り降ろしてくると、いわゆるハンド・アップ-つまり、両手とクラブのつくる「く」の字が崩れてしまい、一直線になってしまうケースがじつに多いのです。ボールを強く叩こうと無意識のうちに力が入れば、両ひじは伸びると同時に、手首の位置は上にあがってしまうのも、決して不思議ではありません。
ですが、考えてもみてください。アドレスで「く」の字の形をしていた両手とクラブが、インパクトの瞬間に一直線になってしまえば、ボールにセットしていたクラブヘッドは、もっと体から遠いところを通らざるを得ないではありませんか。
これが、一般のアマチュア・ゴルファーに共通の誤りで、当然ながらボールはクラブのヒールに当り、のみならずインパクトで伸び切った両手によって、クラブヘッドは急激にインサイドに引かれますから、ボールには時計回りの回転があたえられ、スライスになってしまいます。上達を目指すゴルファーが、何をおいてもまず直さなければならない点でしょう。
みなさんがまったく考えたことがないか、あるいはまったく誤解しているように思えるのですが、インパクトの瞬間には、右手のひじはまだ伸びきってはいけないのです(右利きの場合ですが)。言い換えれば、右ひじが伸びきるのは、クラブヘッドがボールを打ちぬいた直後でなければなりません。この最後の右ひじの "伸び"こそが、ボールに力強いパンチをあたえ、飛距離と同時に正確な方向性をもたらしてくれることを、はっきり意識してください。
そうういわけですから、アドレスではあらかじめ、右ひじを楽にゆとりを持たせて構えることが必須の要件になります。具体的に言えば、アドレスでは、右ひじは下に向けます。できることなら、左ひじも下に向けられれば、そうしてください。さらにいいアドレスができます。
ひじが下を向くということは、遊びがあることを意味します。このひじの遊びが、スウィングを滑らかにし、最後のインパクトの直後に伸ばされることによって、クラブヘッドを走らせるわけです。
それはまた、別のことも意味しています。ゴルフ・スウィングはイン・ツー・インですが、ヘッドの円運動の中で、インパクト直後にひじが伸びるごく短い間、ヘッドは飛行線に対して平行に走ります。これが方向性を決めてくれるわけで、ゴルフ・スウィングにおけるひじの使い方の重要性を、この際、よく理解してください。
第5回 『スウィングの始動』
アドレスができあがったら、いよいよクラブを引いて、バック・スウィングに入ります。
さて、ここでもゴルフのスウィングが如何なるものであるかを、よく理解しておく必要があります。もちろん、あらゆるスポーツは肉体の運動ですから、理屈より何より、同一の体の動きを繰り返し体得することが望ましいことは言うまでもありません。
しかし、そういう練習が可能なのは十代か二十代前半の―ということは社会人になる前までの話で、いったん社会に出てしまえば、理想論を言っていられない。とするなら、基礎的な練習ができない分、頭を使うにこしたことはないわけです。
レッスン書などに、「テイクバックでは、クラブヘッドを約30センチほど飛行線の後方に真っ直ぐ引く」とよく説明されています。
どのような日付は、オリンピックでは、開始および終了しない
こういうレッスン書を目にしたら、「この本はインチキだ」と思って間違いはない。いくら高邁なことが書いてあったとしても、その中味はまったく信用なりません。スウィング・メカニズムがわかっていないからです。
考えてもみてください。ゴルフのスウィングは、体の中心 ―頭からお尻の穴まで突き刺さった仮想の棒― を軸とした回転運動です。この円弧の途中に、30センチもの直線が存在していいわけはないでしょう。これでは、円弧ではなくなってしまいます。
当然のことですが、バックスウィングを始動すると同時に、クラブヘッドは両手の動きと両肩の回転にともなって、自然にインサイドに引かれます。
面白いことに、ここでもクラブの引き方に関して諸説あって、ゴルファーを混乱させている。大きく分けると二説、ひとつは両手から始動し、次いで両肩を回すというもので、もうひとつは両手・両肩を一緒に右後方へ回す―というわけです。この辺りは、論者それぞれの感覚上の問題で、わたしの見るところではほとんど違いはない。おそらく、意識をどちらに置くかという程度の、ささやかな差にすぎないでしょう。
中部流では、むしろクラブの引き方を意識しない方がいい。ボールを打つために、クラブを後方にあげる― そう思うだけで十分なのです。
ゴルフ・スウィングは、できるだけシンプルに考えるべきです。あれこれ体の動きを意識しながらスウィングすることができるほど、人間は器用には創られてはいませんし、何と言ってもスウィングはボールを打つためにするもので、手とか肩とか腰とかの動きを考えたりするよりも、ボールを狙ったところへ打つぞ―と強く意識することの方が、はるかにいい結果が出る。それが、ゴルフ・スウィングの摩訶不思議なところだ―と、達観してください。
ゴルフ・スウィングに関して、ある人がこう定義したそうです―
「始まりから終わりまでわずか二秒の、一見して"自然に"見えるような、64もの筋肉を動員する、極度に不自然な一連の肉体の動き・・・」
あれこれ考え過ぎると、スウィングはこういう滑稽な動きになってしまう。まさに。頂門の一針と言うべきでしょう。
第6回 『スウィング中、頭を動かさない法』
どういうわけでか、ゴルフをやる人びとは理屈が多いように思われます。ゴルフというゲームは、当然のことながら、肉体を使う側面と、頭脳を用いる局面とで成り立っていますが、クラブを握ってボールを打つというスウィングの領域─つまり肉体を使う側面では、とにもかくにも実際に体を動かしてみなければ、どれほど高邁な理屈を語ってみても、まるで無意味ではないでしょうか。
先号で、いったんスウィングを始動したら、「手とか肩とか腰とかの動きを考えたりするよりも。ボールを狙ったところへ打つぞ〜〜と強く意識すること」と言いました。それはまさにその通りなのですが、実を言うなら、スウィング中に「体の動き」で注意しなければならない点が、ひとつだけあります。
アドレスしてからボールを打ち抜くまで、頭は不動のままでなければならない─この一点です。したがって、「体の動き」というよりは「動かしてはならない部分」と言うべきかもしれません。
もちろん、このことは、どのレッスン書を見ても記されている。どれを開いても「頭を動かすな」とは書いてあります。
ですが、いやしくもレッスン書というのであるなら、「頭を動かすな」と言ったら、「どうしたら頭が動かないか」まで説明してくれなければ、嘘でしょう。実際問題として、スウィング中に頭を動かさないことは、口で言うほど易しくはないからです。だとしたら、それを身につける方法を教えてくれなければ、何でレッスン書と呼べるでしょう?
もっとも、「頭を動かさない」とひとことで簡単に言っても、どうしたら頭が動かないかを説明するのは至難の問題です。
そこで、ちょっと発想を変えてみます。物理的に頭を動かさないでスウィングするというのが、果たしてどういうことなのか─その感覚を、まず体で知っておけばどうか?
少年のころ、わたしはベン・ホーガンの写真を見て、スウィング中に頭が微動もしていないことに驚嘆し、真似ようと思いました。が、いくら注意しても、ボールを打つと頭が動いてしまう。どうしたらできるか、それこそ毎晩、徹夜で考えた。その結果、思いついたのが、以下の方法でした。
まず、クラブは持たずに、頭を壁につけて、アドレスをとる。それから、フルスウィングを何度もくり返す。それだけのことです。
そう言うと、この練習法がいかにもやさしそうに思えますが、いざ実際にやってみると頭を動かさずにスウィングするのがどれほど難しいかが、よくわかります。
もし前後に頭が動いていれば、壁に頭が当たって痛くなるでしょう。左右に揺れても、頭の皮が引っ張られて、猛烈に痛いはずです。
しかし、これはどこででも、さしたる時間もかけずに誰でもできることですし、「継続は力なり」の言葉通り、ちょっと続けていれば頭が痛くなることもなくなる─つまり、頭を動かさずにスウィングする感覚が、すでに身についている。まさに、工夫次第でゴルフはやさしくなるのです。
第7回 『スウィング中に左ひざを突っぱらない』
アマチュア・ゴルファーと一緒にプレイしていて、もっとも目につく過ちは、スウィング中に左ひざが突っぱってしまう点です。
もっと具体的に説明してみましょうか。左ひざは、バック・スウィングの間は少し内側に折れながら、ゆったりと遊びがあっていい格好をしているのに、いざダウン・スウィングに入ってボールを打ち抜く段階になると、途端に左ひざが突っぱってしまう。これが、多くのアマチュア・ゴルファーに共通の間違いです。世間では、いわゆるシングルと呼ばれるプレイヤーは、この種の欠点とは無縁だと思っているようですが、とんでもない。ハンディキャップが片手の人でも、ヒッティングの際に、この左ひざが突っぱってしまう例が、決して少なくないのです。
何故、こういう間違いが起きてしまうのか?答はきわめて簡単で、ボールを強く叩こうとするからに他なりません。
ゴルファーなら、誰しもボールを遠くへ飛ばしたいものです。そう思わない人はいないでしょう。
誰がフィリップ·モリスを始めました
ですが、ボールを遠くへ飛ばしたいということと、クラブを強振することとは違います。ボールを飛ばすのは、当然ながらクラブのヘッド・スピードの速さで、したがって遠くへ飛ばすためには、ヘッド・スピードを速くさせる必要があるわけになりますが、ここで錯覚が生じやすい。つまり、力を入れなくてはヘッド・スピードが上がらないーと思ってしまう。
わたし自身は、生来的に距離の出せるだけの体躯に恵まれていなかったので、早くから飛距離に対する幻想は捨てていましたが、それでも「ボールがもっと飛ばせれば有利だろうな」とはいつも考えていて、それなりの努力も重ねました。その結果、得た結論は、むしろヒッティングでは力を入れずにヘッドを走らせてやるーという一点だった。
ヘッドを走らせるとは、ダウン・スウィングでインサイドから下りてきたクラブ・ヘッドがボールをヒットした後、そのまま飛球線に沿って数センチから十数センチほど前方に出ることを意味します。その後、ヘッドがインサイドに引かれてフィニッシュにいたることは、説明の要もないでしょう。
問題は、この数センチないし十数センチのヘッドの動きで、この動きが飛距離だけではなく、方向性までも決めてしまいます。
さて、ここで考えてみましょう。ボールをヒットした瞬間、左ひざが突ぱってしまったら、クラブ・ヘッドを飛球線に沿って、数センチないし十数センチ前方へ出してやることなど不可能ではないですか?間違いなくヘッドは、急激にインサイドに引かれ、したがってヘッドは走らずーと言うことは距離も出ず、方向性までも狂わせてしまうだけです。
では、左ひざを突っぱらせないためには、どうすればいいのか?
わたしは、あえて世間の常識に逆らい、たとえティアップしたボールを打つ場合でも、スウィングの最下点はボールより前方にあるーと考えるようにすべきだと思う。そう思うだけで、ボールをヒットする正確性は格段に上がるはずです…。
第8回 『ドライバーはダウン・ブローで打つ』
前号で、こう書いたー「あえて世間の常識に逆らい、たとえティアップしたボールを打つ場合でも、スウィングの最下点はボールより前方にあるーと考えるようにすべきだと思う。」
ここで、誤解のないように、断っておく必要がありそうです。
ゴルフにおいてスコアの帰趨は、結局はショート・ゲームとパッティングにかかっています。よく言われるように、250ヤードのドライバー・ショットもわずか30センチのパットも、同じ1ストロークなのですから。
ですが、大方のアマチュア・ゴルファーがスコアを乱す原因が、ドライバーのミスにあることも事実なのです。ティでドライバーをしくじる。これが、延々と連鎖していく。よくあることじゃないでしょうか。1打をミスすると、それを取り返そうとして2打目でムリをする。またミスが生まれる。もう、この段階になったら、平常心は失っているでしょうから、グリーン・エッジからトップしてみたり、短いパットも安易に打って3回かかったりもする。あれもこれも、ドライバーのミスが原因しているのです。
ドライバーのミスは、どういう形で起こるのか?
これまでわたしが見てきたところによれば、ドライバーのミスの大半はダフリにあります。それも無理からぬことで、ティアップしたボールを打つという行為そのものが、ダフリを誘発しやすい要因を含んでいるからです。
ティアップしたボールを打つには、当然、スウィングの最下点はボールより手前にこなければならない。クラブヘッドは、最下点を通過したところから上方へ向かい、そこでボールをヒットするーのがドライバーの打ち方だと、誰もが了解しています。
確かに、それはその通りなのですが、ボールをアッパー・ブローで打とうとする意識が強過ぎるために、ダウン・スウィングでクラブヘッドが下がり過ぎてしまうーこれが、アペレージ・ゴルファーがダフリを生む直接因だと言って、間違いありません。
これを防ぐために、わたしは「スウィングの最下点はボールより前方にある」と考えた方がいいーと言っているわけです。
ティアップしたボールは、アッパー・ブローで叩こうと思うより、ダウン・スウィングの途中でボールをヒットすること。これが、ドライバーでのミスを減少させる最大の方法なのだと、わたしは思う。事実、わたし自身のティ・ショットの写真を見ると、ボールを打ち抜いた後で、クラブのソールがかすかに地面に触れて、芝の先がちぎれていることすらありました。そのために、わたしの現役時代、ボールは概して低く、距離もそれほど出てはいなかった代わりに、ミスが生じる確率は非常に低かった。飛距離で50ヤードも違う人が相手でも、正確性で勝負できることは、わたしの戦績が証明しているのではないでしょうか。
それでも、距離の落ちるのは心配だという人がいるに違いない。でも、心配はご無用です。ティアップしたボールを、ダウン・ブローで打とうとしても、クラブヘッドは最下点を通過した後で、ボールをヒットするはずですから。したがって、ボールは十分上り距離も出て、何よりこれでミスが激減するのです。
第9回 『チタン・ドライバーは飛ぶか?』
最近、「チタン・ドライバーって、本当に飛ぶんですか?」と訊かれたり、「チタンにしたら、飛距離が大幅に伸びた」というような言葉を耳にします。今回はこの問題について、わたしの思うところを述べてみます。
ゴルファーにとって、ボールを遠く飛ばすことは、ほとんど永遠の希求であるかのようです。確かに、いいショットをして、ボールがはるか彼方のフェアウェイにはずむのを見るのは、何物にも代えがたい快感でしょう。ですが、その快感ゆえに、ひたすらボールを飛ばすことに執着するのは、果たして賢明なことなのかーと、私は疑います。
ドライバーの材質がパーシモンからメタルに変わったときから、飛距離は伸びたーと言われます。その一方で、ボール自体も技術革新の成果で飛ぶようになっています。最近のプロやトップ-アマチュアの試合を見ると、恐ろしいばかりの飛距離に驚かざるを得ない。
ですが、問題は一般のアマチュア・レベルのことです。飛ぶ(と言われる)クラブが出現して、みんなのゴルフにどのような変化が生じたか?端的に言うなら、それでスコアが向上したかーなのです。
ボールが飛ぶということは、ちょっと考えると、物凄いアドバンテージのようです。しかし、ゴルファーであれば、ボールは飛ばそうと思えば必ず曲がることを、知らないわけがない。かりに、新しい素材のドライバーが飛距離を伸ばすのであれば、それだけ曲がる率も高くなるのは当然なのではないか。
いまや、飛ぶという評判のチタン・ドライバーが一世を風靡していますが、だからと言って、スコアが急速に縮まったとも聞きません。距離の伸びることが本当にアドバンテージであるなら、スコアが縮まらなくては嘘です。「グリーンを狙うのに、いままでは5番アイアンだったが、チタン・ドライバーで距離が出るようになって、同じホールの第二打が6番ないし7番で打てるようになった」というのであれば、もちろんスコアは大幅に縮まっていいはずでしょう。
しかし、現実はそうではない。飛ぶドライバーを使っても、スコアは相変わらず変わらないし、下手をすると、かえって悪くなったりする。どう考えても、飛ぶクラブがアドバンテージに結びついてはいないのです。
正直に言って、チタン・ドライバーが飛ぶかどうか、わたしにはよくわからない。あるいは、飛ぶのかも知れません。けれども、いままで申しあげてきたように、わたしは飛ぶこと自体に、あまり意味があるとは考えないのです。
そうは言いつつ、いま、わたしもチタン・ドライバーを使っています。この十年ほどは、安売り屋で買った9800円のメタルを使っていたのですが、最近、友人と一緒にラウンドした折り、彼が使っていたチタンのドライバーが、じつに"いい顔"をしていたので、打たせてもらいました。すると、このクラブが素晴らしい出来上がりをしていて、飛ぶより何より、打ち損ないがまったくないのでした。そこで早速、同じものを注文したわけです。
それはケン・マツウラという愛媛のメーカーのものです。松浦さんは長らくF1のメカニックをしていた人だそうで、金属やカーボンについての経験をクラブに傾注したものとか。
このドライバーが飛ぶのかどうか、わたしにはどうでもいい。ただ、打ち損ないがない。それが大事なのです。
第10回 『クラブは見栄で選ばない』
先号で、「チタン・ドライバーは果たして飛ぶか」を考えてみました。ついでに、クラブの選択について、お話してみましょうか。と言うのも、世のゴルファー諸氏が、あまりにしばしばクラブを換えるからです。
ですが、クラブは簡単に換えていいものではないと、少なくともわたしは思う。もともと、クラブの選択というのは、男と女の関係によく似ているものです。初めて会ったとき、どこか惹かれるところがある。顔が気に入ったり、全体の雰囲気が好ましいと思ったり、胸が好きになったり、足首の細いのがいいと感じたりする。それと同じで、クラブも自分が好きだ思うことがもっとも大事。どれほど人がいいと言うものでも、自分で気に入らなければ、結局は使いきれません。
ただし、クラブの選択が男女問題と違うところは、男女の間では好きになってもすぐ飽きたり、他の人がもっといいと思ったりするのも、珍しいことではない。が、クラブの場合には、使いはじめてすぐに飽きてしまっては、意味がないでしょう。新しいクラブを使いはじめたら、あまりうまく打てなくても、自分の手にすっかりなじむまで、根気よくボールを打ちつづけなくてはならない。そういう過程があって初めて、クラブは自分のよき伴侶になってくれるのですから・・・。
それと、あまりに早く次のクラブに目移りしてしまう理由として、有名プロが使っているから真似をして自分も使ってみようーという重大な誤りが挙げられるでしょう。まあ、誰が何をしようと勝手ではあるのですが、アイアンであれウッド・クラブであれプロと同じクラブを使おうと思うことは、とんでもない愚かな振舞いだと言うべきです。どだい、プロと一般的なアマチュアとでは、スウィングのヘッド・スピードがまったく違うのですから。プロのショットに憧れるのと、同じクラブを使うこととは、次元の違う話ではないですか。
いま、流行のチタン・ドライバーの場合でも、プロの使っているディーブ・フェイスのものでは、アマチュアにはボールを高く打てない。低い、しかもスライス勝ちのボールしか出ないはずです。
だいたい、ゴルファーは難しいクラブを使いすぎる。クラブは結局、いいスコアをつくる道具にすぎません。だとしたら、絶対的に易しいクラブの方がいいに決まっている。プロへの憧れや見栄で難しいクラブを手にして、いいことは何もありません。
それに第一、ドライバーすら必要ないかもしれませんし、フル・セットも要らない。ゴルファーは十四本のクラブを使ってプレイするゲームだーとよく言われます。その通りには違いありませんが、それはスクラッチ・プレイヤーか、ハンディキャップが片手ぐらいの人に言えることで、クラブが多ければ多いほど難しくなるのがゴルフというものだと言っていい。
わたしは、ハンディが10より多いゴルファーは、ハーフ・セットで十分だと思っています。その証拠に、四本競技の方がふだんよりずっといいスコアでラウンドする例が、あちこちで見受けられるではないですか。
かつて競技に出ていたころ、わたしはバックに十四本のクラブを入れてました。が、競技生活から退いたいまでは、十二本しか入れていない。1と4のウッドに、3から9I、PWとSW、パターです。そのうち、3Iも抜くかもしれません。が、スコアにはあまり関係ないはずです。
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