ゴルファーにとって、最大の喜びとは何でしょうか―?
言うまでもなく、緑の芝の上で白球を打ちながらラウンドすることだ―と、誰もが考えるに違いありません。わたしも同様に、クラブを振ってコースを歩いているだけでも楽しい―ただし、プレー態度のよい人と一緒なら、です。
とは言うものの、ゴルフがスコアを競う遊びである以上は、単にラウンドできれば嬉しいというだけにとどまらず、やはりより少ない数でまわりたい―と思うのが、ゴルファーというものではないでしょうか?
ここで、問題が生じます。あらゆるスポーツにおいて、技術の向上は練習なしには望めません。ゴルフでも事情はまったく同じで、絶えざる練習を通じてしか飛躍はできないのです。にもかかわらず、たいていのアマチュア・ゴルファーには、練習するだけの時間がない。できても、せいぜい週末の一日か二日に限られます。もちろん、これは当然のことです。社会人にとっては、ゴルフが上手になるよりも、仕事に精出すほうが大事なのですから。その証拠に、いま、日本のトップ・アマチュアと言えば、学生か自家営業の人ばかりなのです。
身も蓋もない言い方で結論を出してしまえば、ごくふつうの社会人が四十歳からゴルフを始めて、どれほど練習してもスクラッチ・プレーヤーになる、つまりハンディキャップ0になれることは―ごく例外的な才能の人を除いて―まずないでしょう。片手で数えられるハンディまで上達するのも、難しいかも知れない。何しろ、十代でゴルフを始めて数十年もプレーしていても、いわゆるシングルになれない人も多いのですから。
ですが、ゴルフは易しいのだ―と、わたしは敢えて言います。ラウンドでやっと100を切るぐらいのゴルファーを、シングルにするのは無理にしても、平均して80台でまわれるようには、比較的容易にできる―と思っているのです。
もちろん、毎日、仕事が終わってから練習場に駆けつけろとも言いませんし、どこかのジムに通って基礎体力を鍛えろとも言うつもりはありません。週に一回、週末に練習場に通えば、それで十分。
なぜ、それで十分か?それは、90も切れずに切歯扼腕(せっしやくわん)している人は、90が切れないのはボールを打つ技術のせいではない―と、わたしは思っているからです。技術はいまのままでも、90は切れます。頭を切りかえるだけで、ハーフで3打から5打ぐらいは、スコアを縮めることは可能なのです。
嘘だろう―と言う人がいるかも知れません。が、本当です。ゴルフは、そう難しいものではありません―80そこそこでラウンドできるレベルまでは。
その方法論を、次回から説明してみましょう。乞う、ご期待―です。
第2回 『まずはグリップとスタンス』
誤解しないで欲しいのですが、ゴルフのスウィングは自己流であって、いっこうに構いません。スウィングの目的が、人目に美しく見せるものではなく、ボールを打つための運動である以上は、極端に言えば、ボールを正確に打てさえすれば、どんな格好でもいい。ただし、あくまでもボールを正確に打てれば―の話です。
ですが、自己流のスウィングでボールを自在に打てる人は、実際上、少ないでしょう。そのために、どういうスウィングをすればボールを思うように打てるのか、先人たちはいろいろ研究を重ねてきました。その結果―時代によってスウィングのあり方に多少の違いはあるものの―一応のスタンダードが確立されて、今日にまで至っています。
それによって、ティアップしたボールを打つ場合で言えば、ボールが左足の踵の線上にくるようにボールに正対するアドレスが、まずできる(ボールに正対するということは、飛球線に対して体が平行になることを意味します)。アイアン・ショットの場合ですとボールの位置はほぼ10センチほど右に移動させます。
なぜ、ティアップした場合と地面の上から打つ場合とで、ボールの位置を変えなくてはならないのか?(この理由をはっきり理解するかしないかで、特にアイアン・ショットの精度が格段に違ってきます)
ゴルフ・スウィングという円弧の最下点は、ティアップしたボールに対する場合、ボールの約七、八センチ手前にくるのが普通です。これに対し、地面の上にあるボールを打つ際には、円弧の最下点がボールの二、三センチ先にくるようにクラブを振らなくてはなりません(そうでなければ、クラブの機能を十分に生かしたスピンをボールにあたえられず、飛球にロフト通りの高さも得られないからです。)このあるべき円弧の最下点の位置の違いが、体に対するボールの置き場所を変える必要を生むと思ってください。
さて、スウィングに入る前にもうひとつ大事なのは、グリップです。これも自分が握りやすい方法が一番いいと言えば言えるのですが、この点に関しても、先人たちの知恵はやはり生きていて、クラブを両手で握った際にできる親指と人差し指がつくるVの字が、右肩を指すように握るのがもっともボールを力強く打て、かつ方向を制御しやすいのです。
ゴルフ・スウィングは、始動しはじめると、長くても三秒、普通は二秒もかかりません。ですから、いったんスウィングを始めたら、体の動きを細部にわたって矯正することなど、不可能でしょう。要するに、スウィングに関するチェックはすべて、始動する以前にしなければならない―のですが、わたしの考えるかぎり、スウィングにおいて大事なのは、グリップとアドレスがまず第一。正しくグリップして、正しく立つ。ゴルフのすべては、ここから始まるので、自分のグリップとアドレスを検分してみてください。
第3回 『アドレスで注意すべき点』
さて、仮想の飛球ラインに対して平行に体をセットし、ボールの位置も決めてスタンスをとりました。これがアドレスですが、この際、いくつか注意すべき点があります。
このアドレスを飛球ラインの後方から見ると、体が「く」の字をちょっと右に傾けた格好になりますが、多くのゴルファーがこの「く」の字の頂点から、両目をボールに正対させて見ているのがふつうでしょう。そうすると当然、あごが引けます。